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難治症・希少症例
 

10. ≪狭心症に対する鍼灸治療

 
【患者】 66才・女性 
 

【主訴】胸部の痛み、動悸

この患者さんは仕事柄、まる一日気の休まることのない生活をしている。
仕事のストレスと生活の不規則から、高血圧症、不安神経症、不眠症、膀胱炎など様々な病状をかかえている。
心臓に関しては、これまでも動悸を訴えることはあったが、痛みははじめてであった。
定期的に都心の内科医に通院しており、いずれ狭心症の発作が出てもおかしくないと言われていたが、この日は日曜でもあり、鍼で何とかなるのではないかと当院を受診することになった。

 
【治療】
<第一診>
とうとう狭心症の発作が出ました、ということで。この日は照海-列厥の奇経を取る。
私もどうなることか不安だったが、左手の列厥の鍼がズーンと心臓にまで響いて気持ちがよいということで、ひとまず安心した。
つづいてうつ伏せにもなれるようだったので、背部から心兪と神藏に、ごく軽く置鍼しながら、下腿に鍼をしてこの日は終了とした。
終った後は、胸の中が本当に軽くなったと喜ばれたので、鍼の面目をほどこしたこととなった。
「健康のために歩いて帰った方がよいのでしょうか」というので、「こんな日くらいはタクシーーで帰った方がよいのでは」と答えると、「ではタクシーで」ということになり、素直に車を呼んだ。
 
<第二診>
翌日、再診したところ、心臓の痛みは治まっているが、左の胸全体が痛む、筋肉痛のようだということである。
昨日のようすから判断すると、列厥からの刺鍼だけで充分な効果があるようだったので、この日は列厥の鍼を雀啄(雀がついばむように、鍼を小刻みに動かす技法)して、左胸全体に響かせる。
これでまた楽になったということなので、背部から軽い治療をしたのち終了とする。
 
 昨日は心臓の痛みが止まったのがあまり嬉しかったので、タクシーの運転手さんに、そのことを言うと、運転手さんも喜んでくれた。こんな日くらいはタクシーで帰った方が良いと言われたのでタクシーを呼んでもらったのだと言うと、さらに喜んでくれたと話していた。まるで落語のような話の転じ方に、私も感心してしまった。